Interview with YU SORA

今シーズンrito structureとコラボレーションアイテムを制作したアーティスト『YU SORA(ユ・ソラ)』。白い布と糸を用いて、キャンバスから大きな立体作品まで数多くの作品を生み出しています。今回インタビューを通して彼女の想いと作品について紐解いていきます。

ーご出身と現在の活動拠点について教えてください。

韓国生まれ韓国育ちです。韓国の大学に通っていたのですが、たまたま日韓合同展のイベントが日本であることを知り、卒業旅行感覚で参加しました。そこで受けた評価が次の展示のきっかけとなって、日本での展示の機会が増えていきました。最初は行ったり来たりしながら東京で作品を発表していましたが、それが6年くらい経った頃に拠点を移すことを考え、東京藝術大学大学院に入りました。

ー白い布に黒い糸で表現した作品が象徴的ですが、この表現はいつ頃から行なっているものですか?またこの表現に至った流れを教えてください。

韓国の大学1年生の時はファッションデザイン科に通っていました。そこで洋服以外の作品を自由に作るという課題があったのですが、その時立体作品を作りたいと思っても思うような作品はまだ作れず、出来ることといえばミシンしかなかったので、自分の顔をミシンで描いてそこに綿を詰めて立体にしました。

また別の課題では自分の部屋を描くというテーマがあって、すごく散らかっている自分の部屋を描いたことがありました。最初はノートにボールペンで描いていたんですが、ボールペンに見えるけど、近づいてみて違ったりすると面白そうだなと思い、今度は白い布に刺繍で描いてみました。それらが今の作品のスタートだと思います。

ー韓国の大学の在学中からということは、かなり長い間この表現で作品を生み出し続けているということですね。

そうですね。1番最初の個展が2010年だったので、展示も10年以上は続けています。最初はキャンバス作品が多かったんですが、東京の藝術大学に入ったことが立体作品をたくさん作るきっかけになりました。より大きな立体を作りたいと思い、当初キャンバスに描いていた白い部屋を丸々立体で作りました。最近でも部屋の中に入って近くで作品を見たりできる立体のインスタレーション作品を展示しています。

ー手法は主に手刺繍とミシンですか?また作品の制作はどこで行なっていますか?

刺繍がメインではありますが、さまざまな手法をミックスしています。例えば椅子やカーテンのような家具の立体作品では、実際のものをトレースして、プラ板で形を作って布を貼っています。本のような小さい立体もベースはプラ板で出来ています。また糸も接着剤で貼り付けたり、大きい部分はミシン、文字のように細かいところは手刺繍で行ったりと、一つの作品の中でも使い分けています。また、展示によっては紙にペンで描いたドローイングなども一緒に展示したりしますし、版画作品なども制作したりしています。

場所は現在六本木にアトリエを借りて制作しています。自宅でも作業をすることはあるのですが、ベッドやソファといった大きな立体作品を作るには家だと狭くて。以前は大学のアトリエを使わせていただいていました。韓国にいた頃には友達と何人かでアトリエを借りていましたね。

ー日常的なモチーフから柔らかさや暖かさを感じる反面、モノクロであることや、糸が垂れ下がっていること等で、少し儚さのような感覚を感じるのですが、何か意図や想いが影響していますか?

最初は自分の部屋の絵を描く際に、何となく黒ボールペンで絵を描いていたことから刺繍のカラーも単純に白黒になっていました。色を塗ったり異なる色の生地などもたくさん試してみたのですが、あえて塗り絵のように色が無いことによって、見る人がそれぞれの日常の姿を思い浮かべたり、重ねて見てくれるんじゃないかと思いはじめ、結局白黒にしました。

あと糸を残していることについては、日常の脆さのような感覚を表現しています。例えば立体作品の場合、糸を引っ張ると全部解れて消えてしまいそうみたいな。

少し重い話になりますが、日本の震災であったり、韓国でも船の大規模な事故など、多くの方が命を落とす出来事を見たり、実際に周りの知り合いが亡くなったりということもあって、日常が突然無くなることを実感しました。自分が生きていても、身近な人の状況や、病気等でも日常は崩れてしまいます。そういったことから日常って何だろうと考え始めて、今では日常に対しての想いや伝えたいことの表現が作品になっています。

ー日常のインスピレーション源はどこから湧いてきますか?

最初は自分の部屋だけを描いていましたが、留学で日本に来る前に少し行き詰まったことがありました。何を描いていいかわからなくなってしまって。その時から人の家を眺めてみたりするようになりました。ベランダの洗濯物だったり、玄関の前には植木鉢が置いてあったり、子供のおもちゃとか置いていたり。人の家を見て、みんなどういうふうに生活しているかなということを感じています。

最近はインスタグラムでもキッチンの洗い物の様子だけを毎日アップする人とか、日常を見せている人もいっぱいいるのでそういうのも目にしますね。あと去年結婚したんですけれど、一緒に住む人がいると自分一人の時とは違う部屋の姿になるし、これからも家族が増えたりするとまた日常の姿が変わるんだなって思います。そういったこと全てが私のインスピレーション源です。今もどんどん作りたいものが増えています。

ー今回のrito structureとのコラボレーションの経緯について教えていただけますか?また洋服の制作を行なってみて如何でしたか?

5月に横浜で展示を行っていた際にrito structureのディレクターの嶋川さんがいらしてくださいました。とても嬉しそうな顔で何周も回って作品を見ていただいていたので、お声をおかけしたのがきっかけです。その時にいろんなお話をし、「何か一緒にやってみませんか」とお誘いをいただきました。もともと面識は無かったので突然のお誘いに少し驚きましたが、話を伺ってみると実は私が不在だった日に一度来てくださっていて作品を気に入って頂いていたようでした。

洋服のコラボレーションについては韓国にいた頃に何度かファッションブランドにお声掛けをいただいたことはあったのですが、うまくいかなかった経験がありました。その経験から自分は洋服の取り組みには向いていないだろうと思っていました。でも、こんな表情で作品を見てくださる方なら信じてやってみようと思い、初の洋服とのコラボレーションに取り組むことを決めました。日本だとゆっくり進むものかと思っていたんですけど、あっという間に3ヶ月程で商品になりました。

完成された洋服のデザインに対して、どこに手を入れれば良いかを考えることが難しかったですね。輪郭を縁取るように刺繍したシャツは何度も何度も嶋川さんと話し合いを重ねてイメージに近づけていきました。プリントのトートバッグはrito structureのロゴとテキストデザインを一度全て刺繍してからデータにしてプリントしています。細かいところは手で刺繍し、糸が絡まってしまった部分もあえてそのままデータにしました。今回のお仕事でやっぱり話し合うことは大事だなって思いましたし、これをきっかけに自分の作品についても考えるきっかけになりました。

ー最後に、今回のLimited Shopでの企画について教えてください。

商品の販売期間中は店頭にて一部の作品を展示します。また9/10(土)にはrito structureのアーカイブ生地を使用したキーホルダーにその場で好きな文字を刺繍するプレゼント企画を行います。その日の私は一日お店にいてミシンを動かしているでしょう(笑)。

YU SORA(ユ・ソラ)YU SORA(ユ・ソラ)

1987年韓国、京畿道生まれ。2011年弘益大学(Hongik University, 韓国)彫塑科卒業。

2020年東京藝術大学大学院美術研究科 彫刻専攻修士課程修了。

2013年黄金町バザール参加、2019年六本木アートナイト参加。

2020年第68回東京藝術大学修了作品展で買上作品、杜賞を受賞。

2018年Tokyo Midtown Award 優秀賞、 2022年Sanwa company Art Awardグランプリを受賞。

近年の主な個展にBankART Under35展(BankART KAIKO、横浜、2022年)、「普通の日」(あまらぶアートラボ A-lab、兵庫・Namdong Sorae Art Hall、仁川、2021年)、「些細な記念日」(Gallery Lotte、ソウル、2018年)、「引越し」(YCC Gallery、横浜、2017年)など。

YU SORA Collaboration Products

 コラボレーションアイテムは、Online Shopと渋谷パルコ Limited Shopにて9/9(金)発売。

Cotton Embroidery Shirt

rito structureのアイコニックシャツをベースに刺繍を施したアイテム。輪郭に見えるように縁どられたステッチや長く残した糸など、YU SORAの普段の作風を落とし込んでいます。

Padded Shirt

ユニセックスのパテッドシャツをベースに、YU SORAが過去に制作した中綿の作品から連想し、同色のロゴを刺繍を施しています。中綿の為、刺繍部分が通常よりも立体感のある仕上がりです。

*この商品はOnline Shopでの販売予定は無く、Shibuya PARCO Limited Shopのみの販売となります。

Sugar Graphic U-Neck Tops

YU SORAの過去のキャンバス作品を刺繍したロングスリーブTシャツ。モチーフとなっているのはハンバーガー店のコーヒーの砂糖。身近な日常を描いた作品です。

Graphic Logo U-Neck Tops

一見刺繍に見えるワンポイントのロングスリーブTシャツはプリントによるもの。一度実際に刺繍したものをデータにしプリントしています。

Embroidery Purse Bag

過去のコレクションのローシルク生地をアップサイクルした巾着型のバッグ。前面にロゴ刺繍を施しています。

Embroidery Tote Bag

過去のコレクションのローシルク生地をアップサイクルしたショルダーバッグ。さりげなく施されたロゴ刺繍は輪郭のみながらも印象の強い仕上がりです。

Graphic organic cotton Eco Bag

ロングスリーブTシャツと同様、一度実際に刺繍したものをデータにしプリントしたトートバッグ。手刺繍の風合いや垂れた糸まで細かく表現されています。


rito structure Shibuya PARCO Limited ShopYU SORA Collaboration Project


YU SORA コラボレーションアイテムは9/9(金)〜販売。期間中は一部作品の展示も行います。

9/10(土)にはYu Sora氏が在店しプレゼント企画を開催。9/9(金)〜9/10(土)に店頭でご購入いただいた方を対象に(一部対象外品あり)、rito structureのアーカイブ生地を使用したキーホルダーに好きな文字をYu Sora氏が刺繍してプレゼントいたします。


*キーホルダーは後日配送でのお届けとなります。入れられる文字には一部制限がございます。


8/11(木)-10/10(月)

渋谷パルコ3階 東京都渋谷区宇田川町15-1

営業時間:11:00-20:00

JOURNAL